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AROUND series 2020

AROUND series(アラウンド シリーズ)2020

 

このAROUND seriesは日常の生活空間に、気軽にアートの楽しみを…という思いから制作した、ポスタースタイルのアート作品群です。いつものアート作品の制作では、絵筆、ペン、バレンやハサミを自ら振るうわけですが、このアートポスターでは、高精細なオフセット印刷、シルクスクリーンや箔押加工など、専門の職人や技術者の技と情熱が必要不可欠。そんな方々と丁寧にコミュニケーションを重ね、日常で得たインスピレーションを徐々に形にしていく、共同作業とも言える制作過程は、普段の孤独な作品制作とは、一味違う緊張感と楽しさがあります。一見すると伝わりにくいかも知れませんが、表現を根幹で支えている技術と、隅々まで行き届いた想いの熱量が、ポスター形式という“平静”を装うことで、難しいことは抜きに作品を身近に感じていただき、生活に取り込みやすくなるよう制作いたしております。仕事も生活も、いつもの空間で過ごすことが増えるなかで、過ごす時間のあちらこちらを、さらりと彩れるアクセントアートとして、このAROUN seriesを楽しんでいただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

さて、今回は制作手法のことなる、『unforgettable thing(忘れられないこと)』『Ambiguity of beauty in the composition of everyday life(日常の構図にある美の曖昧性)』『Fragments of color in the memory(記憶の中の色の断片)』という3つの作品カテゴリーをご紹介いたします。各作品のインスピレーションを簡単にご紹介いたしますので、作品と合わせてご覧ください。

 

 

●『unforgettable thing(忘れられないこと)』

[用紙:プライク(ホワイト・720×1020 T目243kg) / サイズ:364×515㎜(B3サイズ)]

5色のインキを使い、シルクスクリーン印刷で制作した3つの作品。背景にはメタリックやパールを用い、光の加減で紙面に変化をもたらし、記憶に残る一瞬のシーンを描いた作品です。

 

○『unforgettable thing #1 Houttuynia cordata(ドクダミの花)』

引越したばかりの頃、庭に蔓延(はびこ)るドクダミの草が、少々厄介だなぁ…と思っていたある日、ひと晩で、一気に咲き乱れた一面の白い花々に息をのみ、その日を境に、少しばかり見る目がマシになったものです。

 

『unforgettable thing #2 Silence(沈黙)』

絵の構想のことで、どうも煮詰まり、池のほとりで、ふて気味座り込んでいたとき、水面で目にしたアメンボに、世界の均衡を一身に背負ったような、そんな緊張と静けさを感じとり、描かないでおいた方がいい、そんな美もあることを教えられたものです。

 

『unforgettable thing #3 Signs(きざし)』

旅先で訪れた、ある石庭でのこと。縁側から眺める庭先を、美しい一陣の通り雨が。その直前の、頬に感じる空気の変化と、その直後の、漂う蒸気に温めらた、石の香り。美しさの前後にある、そんなきざしの中にも、微かに滲み出した美があることを知ったものです。

 

 

『Ambiguity of beauty in the composition of everyday life(日常の構図にある美の曖昧性)』

[用紙:マットカラーHG(四六Y目223.5kg) / サイズ:364×515㎜(B3サイズ)]

シルキーな肌合いの紙に、光沢感のある深い黒の箔押し加工のみで制作した2つの作品。白と黒、その質感のコントラストだけで構図美しさを追求した作品です。

 

『Ambiguity of beauty in the composition of everyday life #1 Untitled(無題)』

仕事で訪れた、大きな池のほとり。風に揺れる水面が、その一瞬、鏡のように鎮まり、目の前にあるこの世界にはいつでも、美しさが潜んでいることを知った時の構図です。

 

『Ambiguity of beauty in the composition of everyday life #2 Untitled(無題)』

散歩の途中で、ふらりと立ち寄った空き地。敷地の境を示す太い鉄線に、ふわりと舞い降りた繊細な羽。互いの存在にコントラストがあるから日常が美しい、そう感じた構図です。

 

 

『Fragments of color in the memory(記憶の中の色の断片)』

[用紙:ルミネッセンス(マキシマムホワイト・四六Y目220kg) / サイズ:364×515㎜(B3サイズ)]

特色6色を高精細なFMスクリーンというオフセット印刷によって刷り、その上からUV厚盛印刷によって立体感をだした4つの作品。極小のシンプルな図形をリズミカルに組み合わせ、色をめぐる様々なインスピレーションをタイル模様のように表現。指先で触れると感じる絵柄部分の立体感は、まるで小さなタイルが張り付いているかのような楽しさがある作品です。

 

『Fragments of color in the memory #1  Something transitory, Rowan(うつろい、ナナカマド)』

繊細で優美な紅葉をみせる、ナナカマドの木。それは、真紅に染まりきる直前。かすかに残る淡緑が、自身の背光となり、鮮やかなオレンジ色へとうつろう頃の、内なる色彩の輝きと、その悦びの記憶です。

 

『Fragments of color in the memory #2  In the afterglow, Cups & Balls(この余韻、カップ&ボール)』

最古のマジックといわれる、カップ&ボール。流麗なる振る舞いで、見る者の心を惹き寄せては、軽やかに欺く…。でも騙されたことが、なぜだかちょっと嬉しい、そんな、小粋で不思議な余韻の記憶です。

 

『Fragments of color in the memory #3  The Foggy Still Forest(霧がかる、静かな森)』

雨上がりの、静もる森。樹木や草苔を白く覆う、深い霧に鎮められ、まるで森全体が、途方もなく深い眠りについたかのよう。ただ一筋に、深淵な呼吸を繰り返す、静かな森が伝える、息遣いの記憶です。

 

『Fragments of color in the memory #4  In the twilight(たそがれ時に)』

太陽が沈み、今日の背中を見送る、ほんの一刻のこと。大気に灯るその美しい青は、地球上に芽生えた、その日のあらゆる感情を、まるで鎮めるかのようです。そんな青があることに、気がついた時の記憶です。

 

すべての作品のご鑑賞は[こちら]から。